これまで言ったことがあるか、ないかは覚えていないけれども、オッサンの移動手段はもっぱら自転車である。
それも、前部に金網カゴのついたママチャリだ。
だから、ストリートライブをしに行くときも当然のごとくこれを使う。
黒い手さげカバンに何冊かの歌本を入れ、ギターは背中に担ぐ。担ぐといっても、今はリュックサックみたいに両肩にベルトのかけられるタイプのソフトケースがあるから便利である。
何故、このようなどうでもいい話をしているかというと、実は、ごく最近、オッサンの身近で起こった、思い出すたびに腹の立つ、情けない事件を語るための前フリである。
これは、じつに、ふざけていると言おうかナメていると言おうか
やる気のないと言おうか、何とも言いようのない無能な、税金泥棒との烙印を押されるべき警官の物語である。
あんまり、ゴタゴタと長い前フリをしていると、「何があったのか早く言えっ!」と、お叱りを受けそうなので、そうそうに簡略化して話そうと思う。
オッサンが、いつものようにギターを担いで自転車に乗り、ちょうど旭町桟橋から稲佐橋へとぬける海岸ベタの道路を走っていたときのこと。タワーシティービルの真下あたりで、二人の酔っ払いらしき男二人がなにやら争っている様子であった。
そして突然、その独りが相手の胸グラをつかんで、投げ倒したのだ。
そして、起き上がってくるのをまた投げようとしているではないか。そのときオッサンは、あと50メートル程の距離にいて、急いでその二人を止めようと、自転車を走らせ、あと何メートルのところまで来て自転車を降りた。
そのときである。
そのオッサン達の目の前を、二十キロくらいのゆったりしたスピードでパトカーが通り過ぎた。
文字通り、何もしないで通り過ぎたのである。
オッサンが何を言いたいのかがわかるだろうか? あきらかにケンカをしている男二人を横目でハッキリと認めながら、何もせず、それもパトカーに乗って、CO2をまきちらし、知らん顔して素通りしたのだ。
オッサンは一瞬めまいがしそうだった。
「何やってんだっ!」と、オッサンの一言で、酔っ払いはどこかへ逃げるように消えていったが、その後どうなったかは知らない。
けれどもである。
もし、「何だこの野郎!」と、むこうの二人がオッサンに殴りかかってきたら、オッサンだとて、黙って投げられたり、ケラれたりするわけにはいかない。
それなりの応戦をしていたかもしれない。ただ、結果的に何事もなかっただけの話である。
つまり、一般人のケンカを、他の一般人が怒鳴ってやめさせただけの話なのだが、それではいったい警察官とは何のためにパトカーに乗って見回りをしているのだろうか?
職務質問をして、ただ一般市民に働いていますよという姿を見せるためか?
(実際、今月だけでもオッサンはすでに、四回も職務質問を受けている。その四回とも持っているものを全部見せろという、実にめんどうくさいやつである)
もちろん、ああいう警官は、あの二人しかいないと思うが、思い出すたびに腹が立ってしょうがない。
その後のオッサンのストリートライブは、いつもより大声を張り上げすぎて、帰るときには、少々ノドがかすれていた。
今度また、警官に職務質問を受けたら、その時のことをイヤミたっぷりに話してやろうと思っている。