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第 章

 さて、これからが大変である。
「何とか、屋根に乗っかっているのだけでも取り除きます」と言った以上は何とかしなければならない。
 言うは易く行なうは難しとは、まさにこの事であろうか、無い知恵を絞り出そうとオッサンは考え悩んだ。
 けれども、どう考えても一人では無理である。
 それに、まず、石垣の上から屋根の上までを渡るためのハジゴがいるのだ。
 悩んだ末にオッサンは電器屋の友人に手伝ってもらうことにした。
 だが、この友人にしたところで、確実に手伝ってもらえる保証はないのである。もし予定の仕事が入っていたら、アウトである。
 その時は、オッサン一人でなんとかしなければならない。
 ちょうど土曜日の夜に消防団の会合があったので、そのとき電器屋の友人に予定を尋ねてみようと思った。
 正直に言って、もしダメだとなったらどうしようかと、軽いはずの頭が、やたらに重くて困った。
 会合にやって来た友人に、恐る恐る予定を聞いてみると、大丈夫であるという。
 ホッと胸をなでおろしたオッサンであったが、二人がかりで果たしてどこまでやれるものだろうかと不安は残っていた。
 翌日の朝からオッサンは仕事にとりかかった。
 電器屋の友人とは午前十時からと約束をしていたので、その前に少しでも一人で片付けておこうと思ったのである。
 ところが、昔の家屋というのは、しっかりとした作りで、材料も良い物を使っているのか、えらく重いのである。
 特に梁として使われていたらしい材木などは、三メートル程もある。こんなのが数本も屋根の上に乗っているし、おまけに土壁で作ってあるから、泥まみれになりながら、作業を行なった。
 友人が到着してからも、午前中はほとんどが、この泥との格闘である。
 昼頃に雨が降りだして来たので、休憩がてら雨宿りをした。
 このとき、あの大きな木材や窓枠等をどうやって取り除こうかと作戦を練った結果、電動ノコギリで細かくして、ロープで引っ張り上げることに決まった。
 しばらくして、友人は電動ノコギリを取りに車で自宅へと引き返し、またソレをもってやってきた。
 この電動ノコギリは、オッサンにとって曰く因縁のある代物で、以前、オッサンが木の枝を切っていた時、「コードを切らないように注意してくれ」と忠告した瞬間に見事にコードを切ってしまったという、あの忌まわしいブツである。
 「使ってみるか」と友人は言ってくれたが、当然のごとくオッサンは辞退して、家にあった手動の小さなノコギリを使用した。
 同じ失敗を二度と繰り返したくはないのだ。
 思いのほか、この細ギレ作戦は上手くいって、なんとか午後四時すぎには、屋根に乗っかってたものは全て取り除くことができたのだった。
 もちろん作業は、次の日も続いた。今度は屋根の下に落ちている木や土砂を取り除くのである。
 むろん、オッサン一人で行なったわけであるが、これも結構たいへんなもので、屋根の割れたのを差し替える作業まで含めると、丸二日がかりで、やっと終わった次第である。